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2018.12.21

日本人が山ほど残業を強いられる2つの根因|底なし残業なしに成立しない日本人の働き方


なぜ、日本人は長時間労働をしているのでしょうか? その背景には2つの「無限」がありました(写真:iStock/FangXiaNuo)

なぜ、日本人は長時間労働をしているのでしょうか? その背景には2つの「無限」がありました(写真:iStock/FangXiaNuo)

超高齢化社会を迎え、あらゆる仕組みをアップデートする必要に迫られている日本。女性やシニア、外国人をはじめとした多様な人々の力が鍵となる中、それを拒む最大の障壁が、日本独特の働き方「残業」です。
一体なぜ、日本人は長時間労働をしているのか?  2万人を超える調査データを分析し、あらゆる角度から徹底的に残業の実態を解明したパーソル総合研究所と立教大学・中原淳の共同研究「希望の残業学」プロジェクトを講義形式に書籍化した「残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? 」より、底なし残業の裏にある2つの「無限」について解説します。

「残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか? 」 ※外部サイトへ遷移します

全体平均の残業は減ったがフルタイム従業員は高止まり

1980年代後半からは、国際的な批判の対象となったこともあり、日本全体の平均労働時間は徐々に減少してきました。1990年代、バブル崩壊後の日本企業では、雇用している従業員に大きな変動が起こります。

この時期、日本企業は長引く不況を背景に、低賃金で育成コストのかからない、アルバイト・パートという雇用形態を拡充していきました。そこに、不況によって夫だけの収入では家計が苦しくなってきた主婦や、新しく生まれてきたカテゴリであるフリーターといった労働者が参入します。

この人たちの多くは時給制賃金で、労働時間の短いシフト制などで働いているので、1人あたりの労働時間は少なくなり、「全体平均」を押し下げていったのです。一方で、「フルタイム」の雇用者の平均残業時間は長期的にほぼ同水準で高止まりし、ほとんど変わっていません。

他の分析(※)でも、日本の労働時間は1980年代後期の「時短」運動を経ても変わっていないことが統計的に示されています。

<※参考文献>
山本勲、黒田祥子『労働時間の経済分析 超高齢社会の働き方を展望する』日本経済新聞出版社、2014年 
黒田祥子「日本人の労働時間 時短政策導入前とその20年後の比較を中心に」RIETI PolicyDiscussion Paper Series 10-P-002、2010年

つまり、1990年代から現在にかけて起きた労働時間の変化は、「働き方の全体的変化」ではなく、「長く働く人(=正社員)」と「短く働く人(=パートタイム労働者)」の「二極化」現象であると解釈できます。

両者の平均をとっているので、表面上は減ったように見えるのです。この間、日本以外のほとんどの先進国は、さまざまな規制や施策によって労働時間を減らしてきました。

それでは、なぜ日本においては労働時間短縮施策の効果もなく、また、オートメーション化やインターネットなどの革新的技術の普及にもかかわらず、残業習慣がこれほど長く続いてきたのでしょうか。背景には、日本の職場特有の「2つの無限」があるように思います。

1つ目は「時間の無限性」です。その原因は「法規制の実効性の乏しさ」にあります。先ほども述べたように、労働基準法において法定労働時間は1日8時間、週に40時間と定められていますが、第36条により、協定を結びさえすれば、法定時間外労働と休日労働は認められます。

しかも、繁忙期などには「特別条項付の36協定届」を届ければ、残業時間の基準を超えて働かせられるため、実質、青天井で残業ができる仕組みとなっています。

つまり、規制はありつつも、その規制をすっかり「骨抜き」にする条項がしっかりとセットになっているのです。

時間を有限とする必要がある

ヨーロッパでは、国によって基準となる時間は異なるものの、「規制の骨抜き」はできません。企業の超過残業は法的ペナルティが科されます。

日本でも、2018年に成立した「働き方改革法」により特別条項での残業時間の上限が定められたので、今後、青天井は許されませんが、月の上限は最大100時間というかなり高い水準で決着したことと、実際には労使協定を結んでいない企業も多く、実効性があるかはまだ不透明な現状があるため、今後の推移を見守る必要があります。

残業を減らすには「時間」を「有限」とする必要があることを、少し頭の片隅に入れておいてください。就業時間がどこまでかという「境界」がなければ、人は働き続けてしまうのです。

2つ目は「仕事の無限性」です。日本の職場は「どこまでが誰の仕事か」という区切りがつけにくいことで知られています。

専門用語では「仕事の相互依存性」と言います。お互いの仕事がオーバーラップ(重なりあうこと)していて、「ここからここまでがAさん」「ここからここまでがBさん」という具合に明瞭に分けられないのです。職場でごちゃっと仕事を抱え、仕事の責任範囲が不明瞭な傾向があります。

一般に日本以外の多くの国では、「ジョブ型」という雇用システムがとられています。これは、雇用契約時に結ぶ「職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)」という書類によって一人ひとり、明確に仕事の範囲が既定される仕組みです。まず「仕事」が存在し、そこに「人」をつけています。

それに対して日本型の雇用システムは「メンバーシップ型」と呼ばれ、先に「人」を採用してから「仕事」を割り振ります。

その結果、「必要な仕事に人がつく」のではなく、「職場に人がつき、それを皆でこなす」形になるため、「仕事の相互依存度」も高くなります。自分に与えられた仕事が終わっても、「職場のみんなが終わっていなければ終わりにくい」ところがあり、他の人の仕事を手伝う、若手のフォローアップを行う、といったプラスアルファが求められます。

これら2つの無限が重なり合い、負のシナジー(相乗効果)を生み出してしまうのが、日本の職場の特徴です。

なぜ日本の職場で残業が発生するのか

国際的に見ると、アメリカでは労働時間に関して割増賃金の支払い義務はありますが、法による上限規制はなく、日本と同じく「時間の無限性」があります。そのため、アメリカにおいても長時間労働はしばしば問題になってきました。

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しかし、アメリカの多くの企業では、職務記述書によって担当する職務が明確化されていること、さらに成果主義の徹底が労使双方に浸透していることで「仕事の無限性」は避けられています。

担当職務が明確でなく、状況と時期によって変わっていく日本では、与えられた仕事をやり遂げるだけでは評価されず、与えられた仕事「以上」を主体的に探して行うことで社内の評価を高める面があります。

まとめれば、「仕事」に対応して人が雇われていないため、見つけようと思えば仕事を「無限」にでき、さらに仕事の「時間」にも制限がない、という世界にもまれな2つの無限を持っているのが日本の職場なのです。

だからこそ、青天井の残業が発生します。

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【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します

「死ぬほど働く人」が辞められない深刻事情

「世界一幸せなデンマーク人」と日本人の違い

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提供元:日本人が山ほど残業を強いられる2つの根因|東洋経済オンライン

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