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2018.09.06

誰もが知っておきたい「乳がん診断」の最先端 |治療法は日進月歩で進化している


乳がんであるかどうかは、病理診断によって決まるといっても過言ではない(写真:mits / PIXTA)

乳がんであるかどうかは、病理診断によって決まるといっても過言ではない(写真:mits / PIXTA)

8月27日、漫画『ちびまる子ちゃん』の作者、さくらももこさんが乳がんで8月15日に亡くなったことが明らかになり、日本中に大きな衝撃を与えた。乳がんを見落とさないためにも、定期的に検査を受けておきたい。では実際、患者となる私たちは病院でどんな検査を受け、治療方針はどのように決まるのか。8月30日配信のさくらさん死因「乳がん」の診断が難しい根因に続いて、診断のスペシャリスト、小倉加奈子医師が解説する。

さくらさん死因「乳がん」の診断が難しい根因 ※外部サイトに遷移します

がんの精密検査といえば、病変部の細胞や組織を直接採取して顕微鏡で観察する「病理検査」を指すことが多い。病理検査で下される病理診断が「がんの最終診断」となる。特に乳がんは、治療方針も含め、病理診断によって決まるといっても過言ではない。

乳がんの病理検査は、自己検診で「しこり」を発見したとき、あるいは乳がん検診で異常を指摘されたときに行われる。乳がん検診は、マンモグラフィー検査や超音波検査が主流であるが、ここでの異常所見の程度によって、病理検査を行うか否かが決定される。

マンモグラフィー検査の場合は、異常の有無や程度によって5段階評価する。カテゴリー分類と呼ばれているが、カテゴリー3以上は、要精密検査、すなわち病理検査が推奨される。カテゴリー5の場合は、がんの可能性が高くなる。超音波検査の場合もがんに特徴的な所見がいくつかあり、それに該当している所見があった場合は、やはり病理検査が行われる。

「細胞診検査」と「組織診検査」

病理検査には、「細胞診検査」と「組織診検査」の2つがある。

細胞診検査は、注射器を挿入した際の陰圧を利用して細胞を吸引し、それをそのままガラススライドに塗布し、標本を作製する方法である。一方、組織診検査は、病変の一部を切り取り、塊として採取し、標本を作製する。この組織診検査は、別名「針生検(はりせいけん)」とも呼ばれる。細長く小さな病変の塊を採取して検査を行う。

細胞診検査と組織診検査にはそれぞれ長所・短所があるが、基本的にがんの最終診断のためには組織診検査が行われる。また、どちらの検査も病変部に針を刺して細胞や組織を採取して顕微鏡で観察する検査になるが、超音波検査では病変を確認しながらその場ですぐに行うことが可能である。

組織診検査の場合、一度に採取された組織で複数枚のガラススライド標本を作製できる。細胞は基本的に無色であるため染色を施し顕微鏡で観察できるようにするが、形態を観察するための通常の染色以外に、後述する免疫染色標本を作製し、詳しくがんの性質について検査することができる。

乳がんの治療は、肺がんと並び、がんの中で最も進んでいるといえるのではないだろうか。欧米の乳がん患者が非常に多いこともあり、乳がんの研究は日進月歩である。

乳がんに限らずがん診療にかかわる医師は、つねに学び続ける姿勢がなければ、あっという間についていけなくなるほどである。特に薬物療法においては、新薬が次々に開発されている。

分子標的治療薬という抗がん剤がある。特定のがん細胞だけが持っている分子(物質)を標的にした治療薬である。通常、抗がん剤治療は、細胞が分裂するときに作用する薬で、がん細胞だけでなく正常の細胞もダメージを受ける。がん細胞のほうが分裂するスピードが速いために、よりがん細胞のほうに抗がん剤が効くというわけである。

分子標的治療薬はがん細胞のみに作用するために副作用が少ないという利点がある。特に「トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)」は、乳がん治療を大きく変えてきた分子標的治療薬である。

最近はがんの性質をより詳しく調べる

今まで予後不良であった悪性度の高い乳がんで、HER2タンパクという細胞増殖にかかわる物質を持っているタイプの乳がんは、このトラスツズマブが劇的に効き、がんを克服する患者が増えてきた。このトラスツズマブをはじめとして現在ではさまざまな種類の新しい抗がん剤が開発されている。

病理医は、乳がんがこのHER2タンパクを持っているかどうかなど、さまざまな乳がんの性質を調べ、病理診断を行っている。病理医は、そこまで詳細な検査を行ったうえでの病理診断を求められている。近年は、乳がんに限らず肺がんをはじめとしたさまざまながんで次々と分子標的治療薬や免疫療法薬が誕生し、その薬剤の効果を予測するための病理検査が増加している。

病理医にとって、乳がんをはじめとしたがんの病理診断は、難易度も高く、また労力もかかるようになっている。

今までのがんの病理診断は、顕微鏡でがん細胞の形態を観察し、こういう形態のがんですよ、おそらく悪性度はこのくらいですよ、という「組織型」や「分化度」の程度を判定すればよかった。しかし、最近は形態的な特徴による診断に加え、がんの性質をより詳しく調べることが求められる。

通常は、細胞を観察するための基本染色であるヘマトキシリン・エオジン染色(H-E染色)という染色標本のみで診断をするが、乳がんの場合は、この染色標本に加え、都合4つの免疫染色を行う。

免疫染色というのは、がん細胞が持っている分子を「抗原」としたときに、それに「抗体」を反応させ、免疫複合体というものを形成し、それに染色を施したものである。さらに簡単に言ってしまうと、免疫染色では、特定の物質をがん細胞が持っているか否か、色がついているかどうかで判定できるというものである。

乳がんでは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体(いずれも女性ホルモンの受容体である)、先ほどのHER2タンパク、そして、細胞の増殖スピードを確認するためのKi-67という抗体を用いた4つの免疫染色を行う。

乳がんの病理診断では、この4つの免疫染色の結果も併せて報告書に記載する必要がある。

専門家の努力の結集が不可欠

上記の4つの免疫染色を施行することによって、乳がんは大きく4つのタイプに分けられる。

女性ホルモンの受容体のみをもっているがん(ルミナールタイプ)、HER2タンパクが過剰発現しているがん(HER2タイプ)、両方の特徴を持っているがん(ルミナール-HER2タイプ)、そして、女性ホルモンの受容体もHER2タンパクも有していないがん(トリプルネガティブタイプ)である。Ki-67の値(どのくらい増殖スピードがあるのか)も参考にしながら診断する。

これら4つのタイプは、大規模な研究によって、予後が異なることがわかっている。ルミナールタイプは一般的に予後がよく、トリプルネガティブタイプは最も予後が悪い。HER2タイプも基本的に増殖スピードが速い悪性度の高いがんであったが、トラスツズマブの登場によって予後が劇的に改善された。

また、予後だけでなくこれら4つのがんは治療法も異なる。女性ホルモンの受容体を持がんは、ホルモン療法を行うことができる。前述のようにHER2タイプのがんはトラスツズマブによる治療が有効であることが期待される。

このように乳がんの病理診断は、がんの確定診断の時点で、すでに治療法の選択まである程度決めるものであるといえる。

ここ数年、がんの遺伝子異常についての研究が急速に進んでいる。数十種類の遺伝子異常を調べて治療方針を決める方法も確立されつつある。少しでも乳がんで亡くなる患者さんが減っていくよう、自己検診の啓蒙活動から診断方法や新薬の開発まで、さまざまな専門家の日々の努力の結集が不可欠である。

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提供元:誰もが知っておきたい「乳がん診断」の最先端 |東洋経済オンライン

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