2017.06.28
梅雨の「なんとなく不調」を取り除く方法|濃いコーヒーや鶏肉がなぜ効くのか?
体も心もなんだか重い、そんな雨の日をいったいどう過ごせばいい?(撮影:今井康一)
雨の日の満員電車は、皆さんを暗い気持ちにさせるものです。ぬれた傘を持って電車に乗るのは気を使いますし、他人の傘が自分にぶつかりスーツがぬれるのも嫌なものです。体も心もなんだか重い……。こんな不愉快な日を、いったいどうやって過ごせばいいのでしょうか?
私は、ストレス・ケア・カウンセラー養成機関の代表として、日々日本人のストレスと向き合っています。また大学と連携して、ストレスについての研究を行っています。これまでの経験から言えることは、「雨が体調を悪化させ、ストレスを増幅させる」ということ。そして、そこには理由があるのです。
頭痛、だるさ、むくみ…主な理由は「気圧」にあった
雨の日のだるさや頭痛は、実は「低気圧」に由来しています。気圧が低いということは、体にかかる圧力がいつもより減るということです。高い山に登って高山病になるメカニズムと原理は同じ。体にかかる圧力が低くなるせいで、血管やリンパ管の膨張を促し、プチ高山病のような状態になってしまうのです。頭痛やだるさ、むくみが現れるのはそのためです。
また、この低気圧が自律神経も狂わせてしまいます。自律神経は車のブレーキのようなもので、活動が始まる朝はアクセルモードの「交感神経」に、夕方から夜にかけては体を休めるためにブレーキモードの「副交感神経」に変わります。それが雨の日の朝は低気圧の作用によって、いきなりブレーキモードの「副交感神経」に傾いてしまうのです。起きて仕事に出掛けなければならない朝に、ブレーキをかけられるのですから、たまったものではありません。
ですから、雨の日のだるさに「気合」は通用しません。これは気圧による体の変化の問題だからです。ここでは、雨の日の体の変化に対処するための具体的な方法をお伝えします。
熱いシャワーは、心拍数、血圧、体温を上昇させ、体をアクセルモードの交感神経へパキッと切り替えてくれます。だるさや雨の日特有の眠気に非常に効果的です。
シャワーの後には、いつもより濃いめのコーヒーを飲みます。カフェインには血管の膨張を防ぐ効果があるため、雨の日の頭痛や頭重、だるさやむくみに効いてくれます。コーヒーのカフェインの量は以下を参考にしてください。
・ドリップコーヒー(150ml):130mg
・エスプレッソは(50ml):140mg
・市販の缶コーヒー(190ml):120〜130mg
エスプレッソであれば3分の1の量で効果的にカフェインを取ることができますね。
日中は階段を使うことを意識
雨の日はあえて階段を使います。
人間の筋肉の数は500とも600ともいわれていますが、その中でも大切なのは「抗重力筋」と呼ばれるいくつかの筋肉。これは人間が二足歩行を始めるときに活躍した筋肉で、脳とのつながりが深い筋肉です(二足歩行によって私たちの脳が発達したことを思い出してください)。
この筋肉を刺激すると、頭痛やだるさを含め体の不調を改善する効果があるのです。階段を上るときには、特に次の抗重力筋を意識してみましょう。
・お尻の「大臀筋」
・太ももの「大腿四頭筋」と「ハムストリングス」
・ふくらはぎの「下腿三頭筋」
これらの抗重力筋が衰えてくると、歩くこと、階段を上がることを避けるようになり、継続的に脳へ刺激を送ることが少なくなります。これは脳の機能の低下にもつながることがわかっています。実際に小股で歩く女性の認知症の発症率は、大股で歩く人の5〜6倍。認知症になると、一様に歩幅が狭くなりちょこちょこ歩くようになるのは、脳と抗重力筋の関係の深さを物語っているといえます。
また、オフィスで働いている方は、冷蔵庫に保冷剤を1つ常備しておくといいでしょう。
雨の日の頭痛は、血管が膨張することによって引き起こされますから、保冷剤を使って直接血管を収縮させるといいのです。タオルに包んだ保冷剤で、こめかみや首筋を冷やします。
最近の研究で、鶏の胸肉には「イミダペプチド」といわれる疲労回復物質が含まれていることがわかりました。イミダペプチド100mgを2週間摂取しつづけると、体の疲労をリセットすることができます。イミダペプチドを多く含む食品を3つ挙げておきましょう。すべて100g中の値です。
・鶏の胸肉 1223mg
・豚ロース 928mg
・カツオ 811mg
夕飯は鶏の胸肉。睡眠の3時間前には食べ終える
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コンビニなどで見掛ける「サラダチキン」は鶏の胸肉でおおよそ100gほどありますから、これを1つ食べると1223mgものイミダペプチドを摂取することができます。「豚ロース生姜焼き」もコンビニの常備メニューです。こちらも100g前後のパッケージが多いようですから、100mgは意外に簡単に摂取することができますね。梅雨の時期は意識して、これらの食材を使った料理やお総菜を探してみましょう。
また、食事は睡眠の3時間前には終わらせると、翌日の朝のだるさが違ってきます。実は「お腹いっぱい」の状態で眠りにつくと、睡眠の質が落ちて疲れが取れないのです。それはなぜなのでしょうか?
私たちの脳は、大きく3つに分かれています。
いちばん内側にあるのが「脳幹」といわれる脳です。これは生命を維持するための脳で、爬虫(はちゅう)類にも備わっている原始的な脳です。親指ほどの大きさしかなく、私たちの鼻の裏側あたりにあります。脳幹「自律神経」「ホルモン」「免疫」「筋肉」など、体の維持を担当します。また、私たちの内臓も脳幹が動かしています。
夜寝ている意識のない間にも、心臓が全身に血液を送り出し、呼吸を維持してくれているのは、つねにこの脳幹が命令を出しているからです。そして、胃に食べ物が入っていれば、脳幹は消化のために活動をしなければなりません。睡眠中の仕事が1つ増えてしまう、というわけです。お腹がいっぱいの状態だと眠りが浅くなるのは、脳幹がフル稼働しているから。消化のために脳は休むことができないのです。
特に、高タンパクや高脂質を消化するには、時間がかかります。疲れを取るために、焼き肉やウナギ、ニンニクなどを好んで食べる人がいますが、これらの食材は消化に時間がかかり、脳と体を余計に疲れさせてしまいます。
寝る前に3時間空けることができれば、脳幹に余計な負担がかかることなく、脳はしっかりと休むことができます。それは脳幹がつかさどる内臓や自律神経を含めた体全体の疲れを取ることにもつながります。
毎日は難しいかもしれませんが、だるさを感じる雨の日にこそ、3時間前に夕食を終わらせるようにしてみましょう。
雨だから仕方ないと、不調をあきらめることはありません。正しい対処の仕方がわかれば、解決できるからです。1年のうち3分の1が雨の日本で、雨の日に憂鬱になっていては、一生の3分の1を不愉快な気分で過ごすことになってしまいます。
雨が多い日本だからこそ、雨を知り、それを生かしていけたらいいですね。実は雨にはプラスの側面が多々あります。雨を知り、雨を利用する。そんなふうに前向きに過ごせたら1年の3分の1の生き方が変わるのです。
(構成:黒坂真由子)
美野田 啓ニ :BTU(バランスセラピーUniv.)代表
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提供元:梅雨の「なんとなく不調」を取り除く方法|濃いコーヒーや鶏肉がなぜ効くのか?|東洋経済オンライン